

「しん」となる瞬間に、はっとすることがあります。音や空気、光や色、時間や思考が、すべて「しん」となる瞬間。カシワイさんの絵を見ていると、なんだかその瞬間を思い出します。
そして、いつもその物語の向こう側を見てみたいと思うのです。
カシワイさんは、どこかにありそうで、見たことのない世界を描く方です。その平面の絵に、奥行きを足せないだろうか。とびだす絵本のように、絵を重ねることで立体感をつくれたら。そんな話をお伝えしたところ、「そういう表現をやってみたいと思っていたところでした」とお返事をいただいて、制作がはじまりました。


額縁の中で、3枚の絵が重ねられています。カシワイさんが入れてくださったのは、魔法具の絵。手前から奥へと、棚に並ぶ道具のひとつひとつが、少しずつ違う奥行きに置かれています。正面からは見えず、角度を変えたときにはじめて現れる絵もあります。
額縁の上面には、穴を開けました。奥に置いた絵が暗く沈んでしまわないよう、光を取り入れるための窓です。


制作をお願いしたとき、カシワイさんからこんな言葉をいただきました。
「額縁から一緒に絵を考えていくのは新しい魔法が起きそうでわくわくしています」
カシワイさんの作品が入った額縁を見たとき、まさにその言葉どおり魔法のように、額縁という小さな世界の中に物語が広がったようで、とても嬉しくなりました。いろんな角度から覗いたり、光を当ててみたり。すこしどきどきしながら楽しくその物語の中を覗き込んでいたことを覚えています。
額縁仕様
デザイン:オーダーメイド
樹種:ウォールナット
仕上げ:蜜蝋ワックス
イラストレーター カシワイ
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漫画家、イラストレーター。京都市在住。書籍や雑誌の表紙、広告のイラストレーションを数多く担当する。著書に『植物園の歩き方 きれい、心地よい、愛おしい さまざまな「うつくしい」を求めて』(グラフィック社)、『107号室通信』(リイド社)等がある。線や余白を大切に作品を描いている。
会場 TIERS GALLERY(表参道)
展覧会「久米装枠舎と7人の景色」2026年5月7日〜10日